自筆証書遺言、公正証書遺言、『自筆証書遺言の方式緩和』について
こんちには。行政書士安藤あつゆき事務所代表の安藤です。
これまでブログは当事務所のサイトとは別のサイトにアップしておりましたが、サイトのリニューアルに伴い、今後はこちらにアップしてまいります。
また別サイトにアップしていた記事のうち、生前対策(終活)関係の記事は順次こちらに移行してまいります。
本日はそのうち、2018年10月20日にアップした記事を(修正も加えながら)お届けいたします。
それでは、どうぞ♪
目次
- ○ 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
- ○ 公正証書遺言とは
- ・公正証書遺言のメリット① 遺言書の原本が公証役場で保管されます
- ・公正証書遺言のメリット② 公証人は法律のプロです
- ・公正証書遺言のメリット③ 裁判所の検認を受ける必要がありません
- ・公正証書遺言のデメリット
- ○ 自筆証書遺言とは
- ・自筆証書遺言のメリット
- ・自筆証書遺言のデメリット
- ○ 相続法改正における『自筆証書遺言の方式緩和』とは
- ・2019年1月13日に施行された『自筆証書遺言の方式緩和』
- ・財産目録の全文自書が要件からなくなった
- ○ 遺言書をもっと身近に感じよう!
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
当事務所では遺言書のサポートをさせて頂いております。
遺言書には様々な種類があるのをご存じでしょうか。
終活のセミナーなどによく参加されている方は、「知ってる、知ってる~」という感じかもしれませんね。
しかし本日は、「いや、ご存じでない方もいらっしゃるだろう」という思いから、思い切って『自筆証書遺言と公正証書遺言の違い』に絞り、述べてみたいと思います。
また2019年1月から方式が変わる点も踏まえて(=相続法の改正)、以下に記載してまいります。
公正証書遺言とは
簡単に言いますと、遺言者の想いを公証人が公正証書として作成する遺言書のことです。
公正証書遺言のメリット① 遺言書の原本が公証役場で保管されます
遺言書は自宅で保管する方が一般的だと思いますが、自筆証書遺言だと誤って紛失してしまった場合、もう一度遺言を書き直さなければなりません。
※ちなみにコピーをとっておいたとしても、コピーに自筆証書遺言としての効力はありません。
しかし公正証書遺言の場合は、自宅で保管中の謄本(=写し)を、
「あ、やっべー失くした!」
とか、あるいは悪意ある推定相続人が謄本を見つけて、
「あれ、俺の分の遺産が少ないな。よ~し、捨てちゃえ!」
といったことがあっても、効力に影響ありません。
公正証書遺言のメリット② 公証人は法律のプロです
遺言は民法の定めた方式に従って行わなければなりませんが、自筆証書遺言だと方式違背により無効になる可能性があります。
しかし公正証書遺言の場合は、プロの公証人が関わっています。したがって、
「はい、私にお任せください~」
ってな感じできちんと作成してくれますので、無効になる可能性は極めて低いです。
公正証書遺言のメリット③ 裁判所の検認を受ける必要がありません
自筆証書遺言の保管者は、相続の開始(=遺言者の死亡)を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して、『検認』をしてもらう必要があります(cf.民法1004条)。
検認を経ない場合、その後の法務局や金融機関での手続きが進まないことが多いです。(また検認を経ない遺言の執行は、5万円以下の過料に処せられます。cf.民法1005条)
※検認とは、主に偽造や変造がされていないか確認する手続きです。
しかし公正証書遺言の場合、検認は不要です。したがって、すぐ相続手続を進めることができます。(検認の手続きは通常、1か月から2か月程かかるといわれています。)
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリット、それは費用がかかることです。
例えばある親が、長男に2,000万円、次男に1,000万円、三男に500万円をそれぞれ相続させたいと思ったとします。
上記を公正証書遺言にした場合、専門家への報酬の他に約70,000円位かかってしまいます(公証役場への手数料、遺言書内の財産の総額が1億円以下の場合の加算金、正本及び謄本の作成費、証人2人への支払いなど←状況により、かからない場合もあります)。
自筆証書遺言とは
簡単に言いますと、全て自分一人の手書きで作成する遺言書のことです。
自筆証書遺言のメリット
・手軽に書けます。
公証人等と関わる必要がないので、
「思い立ったが吉日、よーし、書いちゃえ!」
とまさに手軽に書くことができます。
・費用が安いです。
やっぱり公証人が関わらないので、公証役場での手数料等がかかりません。
自筆証書遺言のデメリット
・紛失や破棄されたら効力は無くなります。
公証役場で原本が保管されないので、ご自身が唯一保管しているものが原本になります。
従って、その保管している原本を紛失してしまうと、もう一度書き直す必要があります。
・民法の定めた方式に従わない遺言書は、無効になります。
公証人が関わらないので、遺言書としての効力が発生しない可能性があります。
ただ、これは専門家などへチェックを依頼することにより、回避できるかと思います。(自筆証書遺言のチェックを行っている行政書士も札幌にいらっっしゃいます。)
・検認を受けなければならないので、時間と手間がかかります。
自筆証書遺言は、検認の手続きを受ける必要があります。(上記にも記載しましたが、期間は1か月から2か月程かかる場合もあります。)
時間がかかることはもちろん、裁判所へ行ったりするので、「面倒くさいなぁ」「手間がかかるなぁ」と思う方もおられます。
結局、自筆証書遺言のメリット・デメリットは、ほぼ公正証書遺言の反対になりますね。
相続法改正における『自筆証書遺言の方式緩和』とは
2019年1月13日に施行された『自筆証書遺言の方式緩和』
さて、2018年7月6日に民法(相続法)改正が成立しました。
けっこう大掛かりな改正となっています。
では実際の施行期日(=法律の効力を発生させる日)はいつなのかと申しますと、「公布の日(=2018年7月13日)から1年以内に施行されるものもありますが、公布の日から2年以内に施行されるものもありますよ」といった感じでばらけております。
そんななか最も近日に施行されるのが、『自筆証書遺言の方式緩和』です。
これは、2019年1月13日から施行されます。
従って、本日はこの『自筆証書遺言の方式緩和』に関して、「どう変わったの?」というところを述べてみたいと思います。(他の改正内容に関しては、のちのブログで書ければなぁと思っています。)
財産目録の全文自書が要件からなくなった
まず現行制度の自筆証書遺言を効力あるものとするためには、遺言書の全文を自書する必要があります。
さらに、財産目録も全文自書しなければなりません。
※財産目録とは、遺言者の財産を明らかにするリストみたいなものです。
つまり、遺言書自体を全文手書きで書く必要があるだけでなく、財産目録を添付しようと思っている場合、財産目録もひたすら手書きで書かなければならないのです。
腕の筋肉が衰えた高齢者にとって、たくさん書くことは大変です。
また高齢者にかぎらず、不動産の表示などを登記簿通りに書くこともけっこう大変です。
それが改正後は、自書によらない財産目録を添付することができるようになります。(ただし、遺言書自体は自書であることが必要です。)
例えば、
・パソコンで目録を作成する→OK!
・通帳のコピーを添付する→OK!
といった感じです。
一方で偽造防止のことも考慮されており、例えば、
・目録の毎ページに署名押印をする必要がある。
・裏面があったら、裏にも署名押印しなければならない。
といった感じです。
遺言書をもっと身近に感じよう!
この改正によって、遺言書を書くことの普及が進めばいいなと思っています。
さらには皆さまが遺言書を含め、終活に関してもっと身近に感じて頂けたら嬉しいです。
※2020年7月10日から、『自筆証書遺言書保管制度』が始まりました。
この制度を利用することによって、紛失や第三者による破棄を心配する必要がなくなり、また検認が不要となるため相続人がとても楽になります。
(『自筆証書遺言書保管制度』に関しては、→代表の個人ブログをどうぞ♪)
本日の記事は以上となります。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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