揉めない相続をむかえる為には
こんちには。行政書士安藤あつゆき事務所代表の安藤です。
これまでブログは当事務所のサイトとは別のサイトにアップしておりましたが、サイトのリニューアルに伴い、今後はこちらにアップしてまいります。
また別サイトにアップしていた記事のうち、生前対策(終活)関係の記事は順次こちらに移行してまいります。
本日はそのうち、2018年9月4日にアップした記事を(修正も加えながら)お届けいたします。
それでは、どうぞ♪
目次
- ○ 生前対策(終活)の必要性
- ・生前対策は全世代に必要!
- ・生前対策を行うと「安心」を得ることができる理由
- ○ 母親が亡くなった事例
- ・亡くなった人の預貯金は凍結される
- ・預貯金を引き出すために必要なもの
- ○ 遺産分割協議の役割
- ○ 遺産分割協議を始めてはみたものの...
- ○ 何も対策をしていないと以下の方程式が成り立ってしまう
生前対策(終活)の必要性
生前対策は全世代に必要!
本日は、生前対策(終活)を行っていない場合どんなトラブルが起こりえるのか、を述べてみたいと思います。
まず終活という言葉なんですが、この言葉は高齢者には浸透しておりますが、若い世代の方だと「就活?」というオウム返しがよく起こります。
「終活をはじめなきゃ」と思う方も、やはり高齢者の方が多いようです。
「そりゃ、そうでしょ!」と言う声がたくさん聞こえてきそうですね。
しかし、私は世代関係なく行った方がよいと思っています。
上記の声は、「終活=エンディング(ノート)だから」という感じの方程式が成り立っているのかもしれません。
ですが私は、『終活=生前(つまりは日常)の安心を手に入れること』だと思っております。
従って、「日常の安心を手に入れるのに世代は関係ない」という考えです。
生前対策を行うと「安心」を得ることができる理由
では、なぜ終活=安心なのか。それは終活で決めておくことの代表例が、「治療方針の決定」と「財産の承継方法」だからです。
まず「治療方針の決定」に関してですが、これはまさに生きている状態の時に起こるものです。
そして「財産の承継方法(財産の分け方)」も、親が元気なうちに自分の意思(=想い)を表明しておいた方がよいです。
なぜなら、生前に何も対策をたてておかないと、親が亡くなった後で子供たちが揉めてしまうからなんです。
それでは、何も対策を立てていない場合にどういうことが起こってしまうのか、具体事例をあげてみましょう。
母親が亡くなった事例
亡くなった人の預貯金は凍結される
ある母親が亡くなり、お葬式などが滞りなく終わりました。
その母親には3人の子ども(兄弟)がおり、相続人はこの3人だけです。
そこで3人の兄弟は、ある事にふと気付きます。
母親の預金口座が凍結されて、お金を引き出すことができない!(ガビーン)
預貯金を引き出すために必要なもの
人が亡くなると相続が始まります。
相続というのは、その人の所有していた財産を家族に引き継いでもらうことです。(厳密には少し異なりますが、ここではイメージしやすいようなお伝え方をしていきます。)
そしてこの引き継ぎ方は、民法で定まっている法定相続という分け方で自動的に引き継がれてしまいます。
この兄弟の場合、母親の所有していたものは全て3人の共有状態(つまり母親名義の全部の物に対して、それぞれが3分の1ずつの権利を持つこと)になります。
母親名義の実家があればその実家は自動的に3人の共有物になり、母親名義の預貯金もやはり自動的に3人の共有となります。
「なんだ、自動的に3人のものになるのか。だったら3人で銀行へ行けば預貯金を引き出すことができるじゃん。」
これはある意味正しいです。
預貯金は3人の兄弟のものになっていますので、3人が合意していれば銀行は預貯金の解約に応じ、お金を引き出すことができます。
しかし、その3人の合意として銀行の求めるものが、遺産分割協議書の提出なのです。
遺産分割協議の役割
遺産分割協議書というのは、簡単に言いますと『3人で母親の財産をどう分けるのかについて話し合いをし、その内容を書面にしたもの』です。
そしてこの遺産分割協議書には、一般的には母親の全ての財産を記載します。
銀行に提出するからといって、預貯金だけの分け方では「ダメダメ」なのです(明石家さんまさん、すみません)。
※ただし金融機関によっては所定の用紙に3人の兄弟の印鑑で対応できる場合があります。また一部分割もできないわけではありません。しかし全体の財産の分け方も決まっていないのに、預貯金だけ3人で適当に分けてしまうと後々トラブルになる可能性が大きいです!
全財産...例えば家と土地は誰が貰うのか、車はどうする、各金融機関の預貯金の分け方は...いま現在3人の共有状態になっている全財産を「こういう風に分けました~」と決めること、それが遺産分割協議なのです。
そしてこの遺産分割協議がまとまらないと、いつまでたっても母親の預貯金を引き出すことができません。
※なお相続法の改正により、預貯金仮払い制度が創設されました(2019年7月1日施行)。一定額であれば遺産分割協議の前でも出金が可能です。
遺産分割協議を始めてはみたものの...
そうは言っても、全部の預貯金を引き出せないと困ります。
そこで長男A、次男B、三男Cの兄弟は、遺産分割協議をはじめることにしました。
まずAが、
「何か聞いた話だけど、家とか土地といった不動産を3人の共有にしておくと、将来面倒くさくなるらしいんだ。だから、『これは誰誰』みたいに現物を分けていこうと思うんだけど。」
と話を切り出しました。
「いいと思うよ。それじゃ、家と土地はA兄さん、預貯金は僕、Cはお母さんからお金を貰っていたから(=生前贈与)、車だけでいいんじゃない?」とB。
「俺は車だけ? それはおかしいよ! 確かにお金の贈与を受けていたけど、それでも現金を多少は貰わないと金額的に不公平だよ。」
「それなら僕の預貯金から少し分けてあげるよ。」
「オッケー! それなら俺もこの分け方でいいよ。」
「いや、ちょっと待て。家と土地を貰ったとしても、俺だって現金をいくらか欲しいぞ(ウチの子供だって来年進学するし)。俺にも預貯金分けろよ。」
「いやいや! A兄さんにまで預貯金を分けたら僕の分が減ってしまうよ。だいたい家と土地の価額は僕の預貯金より高いんだから!」
「だったらお前に家と土地をあげるから(俺は別にココには住まないし)、俺に預貯金よこせよ。」
「やだよ! 家と土地を引き継ぐのは長男の役目だろ!」
「誰がそんなこと決めた! いつ決まった? 何時何分何秒か言ってみろ!!」
次男三男 「「...子供かよ」」
何も対策をしていないと以下の方程式が成り立ってしまう
...と、少し大袈裟に兄弟の気持ちを表しましたが、実際、遺産分割協議は揉めやすいのです。
そしてもう一度言いますが、遺産分割協議がまとまらないと母親名義の預貯金をいつまでも引き出すことができません。
結果、以下の方程式が成り立ってしまいます。
『生前に何も対策を立てていない=遺産分割協議を行うはめになる=揉める=兄弟の仲が悪くなる』
実際、親が2人とも亡くなっている高齢者世代ですと、兄弟姉妹の仲はあまり良くないようなことを聞きます。
ぜひ親が元気なうちに、対策を立てておきましょう!
本日の記事は以上となります。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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